リチウムイオン電池は、いま廃棄物処理業界で最も警戒される品目です。破砕・圧縮の衝撃で発火し、処理施設や収集車両の火災が全国で多発——環境省の調査では廃棄物処理における発火トラブルは年間1万件超と報告されています。排出事業者の分別ミスが、委託先の施設を燃やすことがあるのです。
なぜ危険か
リチウムイオン電池は外力で内部短絡すると熱暴走を起こし、数百度で発火します。廃プラや金属くずに紛れて破砕機に入るケースが典型的な火災原因です。見た目が製品に内蔵されて分かりにくい(モバイルバッテリー、コードレス機器、電動工具、加熱式タバコなど)ことが混入を招きます。
事業者の正しい廃棄ルート
ステップ1:機器から取り外し・分別
- 電池内蔵機器はできる限り電池を取り外して別管理
- 取り外せない機器(一体型)は「電池内蔵」として区別して保管
ステップ2:絶縁処理
- 端子にビニールテープを貼って絶縁
- 膨張・破損品は触らず密封・単独保管し、業者に状態を申告
ステップ3:ルートを選ぶ
| ルート | 対象 | 備考 |
|---|---|---|
| 産業廃棄物として委託 | 事業所からの排出全般、破損品、大量排出 | 「リチウムイオン電池含む」とWDS・契約書・マニフェストに明記。対応可能な許可業者を選定 |
| JBRC回収 | JBRC会員企業製の小型充電式電池 | 排出協力店・自治体拠点ルート。事業系大量排出は対象外の場合あり |
| メーカー・販売店回収 | 機器メーカーの引取プログラムがある場合 | 購入元に確認 |
やってはいけないこと
- 可燃ごみ・廃プラ・金属くずへの混入(火災の主因)
- 端子むき出しのまま金属容器にまとめて保管
- 膨張した電池をテープで強く圧迫・分解
委託時のポイント
- 委託先にリチウムイオン電池の受入可否を必ず確認(破砕系施設では受入不可・別ライン扱いが多い)
- WDSに明記:「リチウムイオン電池(絶縁処理済み)を含む」
- 荷姿は不導体の容器(プラコンテナ等)+絶縁済みで
- 社内には専用回収ボックスを設置し、一般のごみ箱への混入を物理的に防ぐ
社内教育が最大の対策
処理施設の火災事例の多くは「知らずに捨てた」ことが原因です。総務からの周知メール1本、回収ボックス1個で混入は大きく減ります。分別ルールの整備は排出事業者責任の一部と捉えてください。
参照:廃棄物の処理及び清掃に関する法律、環境省「リチウム蓄電池等処理困難物対策」関連資料、一般社団法人JBRC(小型充電式電池のリサイクル)
よくある質問
リチウムイオン電池は何の品目になりますか?
産業廃棄物としては金属くず・廃プラスチック類(等の混合物)として扱われるのが一般的です。特別管理産業廃棄物ではありませんが、発火危険性があるため、委託先には必ず「リチウムイオン電池が含まれる」ことをWDS等で伝え、対応可能な業者を選ぶ必要があります。
排出前の絶縁処理とはどうやるのですか?
端子部分にビニールテープ等を貼って絶縁し、金属と接触してショートしないようにします。膨張・破損した電池は無理に扱わず、ビニール袋で密封して単独保管し、処理業者に状態を伝えて指示を仰いでください。
小型充電式電池はJBRCの回収に出せますか?
JBRCの回収はJBRC会員企業製の小型充電式電池が対象で、主に一般消費者・排出協力店ルートです。事業所から大量に出る場合や対象外メーカー品・破損品は、産業廃棄物として許可業者へ委託するのが原則です。
本記事は2026-07-16時点の法令・公開情報にもとづく一般的な解説です。個別の判断は、管轄の都道府県・政令市または専門家(行政書士・弁護士等)にご確認ください。